恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


しばらくそのまま抱き合っていたけど、ふとある事を思い出して紫貴の胸を押した。


「そういえば、こないだ血吸った時、ちょっとしか吸わなかったでしょ」



“こないだ”

それが指すのが、記憶が戻らない間に一回だけされた吸血行為の事だって、紫貴はすぐに分かったみたいだった。


指摘すると、紫貴はふっと笑って「さぁ」ととぼける。


「あの時は分からなかったけど、今なら分かるんだからね。紫貴が遠慮して途中で止めたって。

足りてないでしょ? 今吸っていいよ」

「……今まで気を失ってたくるみから血を抜くなんて、そんな非道な事できるわけがないだろ」

「あたし、もう記憶戻ったんだよ? 紫貴が今我慢してるかどうかくらい分かる。

それに、愛情表現だって言ったじゃん」



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