恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
ヴァンパイアだから、そういう超人的な事ができちゃうのは分かる。
紫貴だって、気配を感じさせないまま背後に立ってたりするし。
だけど、人間からしたら寿命が縮まりそうなくらいに驚くから、少し注意して欲しい。
ベランダに立つ灰斗さんは、窓枠に手をかけて少しだけ身をかがめて微笑む。
「入ってもいい?
……って聞いても、紫貴が反対しそうだから勝手に入らせてもらうけど」
わずかに眉を下げて笑った灰斗さんは、部屋に入ってすぐにある椅子に座った。
そして、あたしをじっと見つめて微笑む。
その表情は、どこか安心したような、そんな顔に見えた。
「賭けは俺の負けだね。くるみちゃん。……まぁ、最初からこうなるとは思ってたけど」
「……」