恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「安心して。俺はもう、紫貴の過去を持ち出して苦しめたりもしないし、くるみちゃんが見ていて嫌だと感じるような事はしない。
紫貴にも、くるみちゃんにも」
「……本当ですか?」
「約束だし。
紫貴も、記憶を戻すような処置はしなかったしね。予想通り」
「え……っ、紫貴にはあたしの記憶を戻す事ができたんですか?!」
灰斗さんから告げられた事にびっくりして聞く。
灰斗さんは「あれ、知らなかった?」なんて肩眉を上げながら答えた。
「血筋の問題だよ。藍川家の一族なら、記憶操作は可能だよ。
紫貴はもちろん知ってたハズだけど、俺とくるみちゃんの交わした賭けを知って、操作する気にはなれなかったんだろ」
「……最初からする気もなかったけど」
「えっ……」
する気がなかったって……、なんで……?
不安になって、紫貴を見上げる。