恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


……そうだ。

ずっと不思議だった事がある。


あたしの記憶を戻すような事は、確かに禁止されてた。

だけど、もう一度、一から付き合う事はできたハズ。

普通の恋人同士になって、その中でまたヴァンパイアだって事を打ち明けて2人で生きていく事だってできた。

なのに、紫貴は、あたしから近づかなければきっと、自分からは近づいてこなかった。


『おまえは、優しすぎる。俺なんか気にしないで普通に生きればそれでいい』

『……―――もう、十分だ、くるみ』


近づかないどころか、あたしを遠ざけようとしてた。


それってつまり……。


「紫貴は……、あたしが思い出さなくてもいいと思ってたの……?」


信じられない思いで聞くと、紫貴は困り顔で笑う。




< 321 / 343 >

この作品をシェア

pagetop