恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
……そうだ。
ずっと不思議だった事がある。
あたしの記憶を戻すような事は、確かに禁止されてた。
だけど、もう一度、一から付き合う事はできたハズ。
普通の恋人同士になって、その中でまたヴァンパイアだって事を打ち明けて2人で生きていく事だってできた。
なのに、紫貴は、あたしから近づかなければきっと、自分からは近づいてこなかった。
『おまえは、優しすぎる。俺なんか気にしないで普通に生きればそれでいい』
『……―――もう、十分だ、くるみ』
近づかないどころか、あたしを遠ざけようとしてた。
それってつまり……。
「紫貴は……、あたしが思い出さなくてもいいと思ってたの……?」
信じられない思いで聞くと、紫貴は困り顔で笑う。