恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「それも、くるみの幸せかと思ったんだ。
ヴァンパイアも何も知らない世界で幸せになってくれるならって……。
それでも、傍にいるとどうしてもくるみが欲しくなって曖昧に正体を明かしたりして。
くるみが卒業までに思い出さなければ、くるみの俺に関する記憶を完全に消して、くるみから離れるつもりだった」
告げられた言葉に、動揺が隠せなかった。
衝撃みたいなモノまで受けて、それはすぐに言葉がでないほどだった。
「紫貴のいない世界なんか、……」
「けど、俺の存在すら忘れていれば、寂しさも何も感じないだろ?」
「……紫貴は、あたしのいない世界で生きていくつもりだったの……?」
紫貴の言うとおり、記憶を消されたらあたしは何も感じないかもしれない。
だけど、紫貴の中にあるあたしの記憶は消えるわけじゃない。