恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
まだ困り顔を浮かべたままの紫貴。
紫色した瞳が、あたしを捕らえて苦しそうに細められた。
「俺はヴァンパイアだから、人間と同じような幸せなんか許されないと思っていた。
母さんは、ヴァンパイアである父さんを受け入れたけど、実際その事実を受け入れてくれる人間なんか少ない。
まして、自分が大切に想う相手に分かってもらうなんて事、不可能だと思ってた。
だけど、くるみに逢って……受け入れられて。
くるみのおかげで毎日が幸せだったから。
くるみと過ごした7年間は、一生かけても償えないくらいに幸せだった」
「だから……、もういいと思ったの……?」
握り締めた手に力が入る。
紫貴は眉を潜めて微笑むだけで、何も応えようとはしない。
ぎゅっと握っていた手で紫貴の胸ぐらを掴んで、ぐっと身体を寄せた。
そして、紫貴をきつく睨む。