恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「でも無駄なんだからね! いくら記憶を消したって、血が紫貴を忘れないんだから!
あたしの血は……紫貴を忘れたりしない。ずっと求め続けるんだから……」
「……悪い」
本当に申し訳なさそうに謝るから、興奮していた気持ちをなんとか落ち着かせてから紫貴を見上げた。
「もういいよ。
だけど、もしまたあたしが記憶を失うような事があったら、全力で紫貴を好きにさせてよね。
そうしなかったら、記憶を取り戻した時、すっごい目に遭わせるから」
「勘弁してくれ。こんなのは一度で十分だ。
……でも、記憶を取り戻す事が前提なんだな」
「当たり前でしょ。あたしは、紫貴を忘れない。……絶対に」
強く言い切って、言葉に負けないくらいの強い眼差しで紫貴を見つめる。
紫貴はふっと笑って……、あたしをぎゅっと抱き締めた。
抱き寄せられる瞬間に見た紫貴の笑顔が、心から安心していたように見えて……。
そんな紫貴の顔を見たのは初めての気がして、じん、と胸の奥から痺れたような嬉しさが全体に広がる。
紫貴の背中に手を回そうとした時。
すっかり忘れていた灰斗さんが、ふぅ、と息をついた。