恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


「俺の負けって事ね」


それだけ言った灰斗さん。

紫貴に肩を抱かれたまま、2人して灰斗さんを見る。


「約束通り、もう紫貴をつらい目に遭わせたりはしないから安心して。

ご要望なら紫貴やくるみちゃんの前にも姿を見せない努力もするよ」


そう言って背中を向けようとする灰斗さんを止めたのは、意外にも紫貴だった。


「兄貴」


灰斗さんが振り向くのを待って、紫貴が続ける。


「兄貴は、くるみが記憶を取り戻さない事と、取り戻す事。
どっちを望んでた?」

「……どういう意味?」


首を傾げた灰斗さん。

開いたままの窓からふんわりした風が入り込んできて、カーテンを揺らす。



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