恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


「くるみの記憶操作を、兄貴がミスするはずがない。

くるみは、“灰斗”と“真紅の薔薇”って言葉に過敏反応していた。

記憶のないくるみが、それでもなんとか俺を見つけ出した時、記憶を取り戻しやすいように、兄貴がそう仕組んだんじゃないのか?

記憶を消した時に関係したモノだけ、くるみの中から完全には消さなかったんだろ」


確かに……、

ぼんやりとした記憶だけで紫貴に辿り着いたあたしが、きちんと取り戻すきっかけになったのは、そのふたつの言葉だった。


なんでだか、その言葉を聞いた途端に、一気に……。


「記憶を取り戻す鍵として、その単語をくるみに記憶させたんだろ?」

「……何のために?」


灰斗さんは、誤魔化すように笑って紫貴を見ていた。

紫貴にはその答えは思い当たらないのか、黙ったまま。


だけど……、あたしには思い当たる言葉があった。

記憶を失う直前、灰斗さんが言っていた言葉……。




『……見たいんだよ。

もう一度……一途な想いを―――……』




< 327 / 343 >

この作品をシェア

pagetop