恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「くるみの記憶操作を、兄貴がミスするはずがない。
くるみは、“灰斗”と“真紅の薔薇”って言葉に過敏反応していた。
記憶のないくるみが、それでもなんとか俺を見つけ出した時、記憶を取り戻しやすいように、兄貴がそう仕組んだんじゃないのか?
記憶を消した時に関係したモノだけ、くるみの中から完全には消さなかったんだろ」
確かに……、
ぼんやりとした記憶だけで紫貴に辿り着いたあたしが、きちんと取り戻すきっかけになったのは、そのふたつの言葉だった。
なんでだか、その言葉を聞いた途端に、一気に……。
「記憶を取り戻す鍵として、その単語をくるみに記憶させたんだろ?」
「……何のために?」
灰斗さんは、誤魔化すように笑って紫貴を見ていた。
紫貴にはその答えは思い当たらないのか、黙ったまま。
だけど……、あたしには思い当たる言葉があった。
記憶を失う直前、灰斗さんが言っていた言葉……。
『……見たいんだよ。
もう一度……一途な想いを―――……』