恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「灰斗さんは……、紫貴のお母さんに、あたしを重ねてたんですか……?」
そう聞いた途端、紫貴と灰斗さんの視線が一気にあたしに集まる。
ふたりとも、信じられないっていう目をしていた。
「亡くなる直前まで、紫貴のお父さんだけを想っていたお母さんを見て……、何か感じた事があったから?」
灰斗さんは、目を伏せて「まさか」とだけ言った。
だけどそれは、すべての感覚が優れてるヴァンパイアじゃないあたしから見ても、嘘だって分かるような態度だった。
「さっき、望むならもう姿を見せないみたいな事言いましたよね?
別に、一生姿を見せないでなんて言いません。
紫貴を傷つけないなら、それでいいんです。兄弟なんだし。
だから、代わりに教えてください。
灰斗さんの気持ちを」