恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


「灰斗さんは……、紫貴のお母さんに、あたしを重ねてたんですか……?」


そう聞いた途端、紫貴と灰斗さんの視線が一気にあたしに集まる。

ふたりとも、信じられないっていう目をしていた。


「亡くなる直前まで、紫貴のお父さんだけを想っていたお母さんを見て……、何か感じた事があったから?」


灰斗さんは、目を伏せて「まさか」とだけ言った。

だけどそれは、すべての感覚が優れてるヴァンパイアじゃないあたしから見ても、嘘だって分かるような態度だった。


「さっき、望むならもう姿を見せないみたいな事言いましたよね?

別に、一生姿を見せないでなんて言いません。

紫貴を傷つけないなら、それでいいんです。兄弟なんだし。

だから、代わりに教えてください。

灰斗さんの気持ちを」



< 328 / 343 >

この作品をシェア

pagetop