恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
灰斗さんの父親は……。
紫貴のお父さんでもある人だ。
つまり、紫貴のお母さんの旦那さん。
紫貴のお母さんの、愛する人。
「『貴方も、私の愛してる人の子供なのよ』って。
『だから、貴方にそんな危ない目には遭って欲しくないの』って……」
紫貴のお母さんがそんな事……?
瞬間的に嘘かとも思ったけど、でも、紫貴から聞いていたお母さんはとても強くて優しい人だったし、なにより。
今の灰斗さんの顔を見たら、嘘かもしれないなんて考えは消えていった。
「バカだろ? あの女。
結局、俺がいつまで経っても戻らないから、美朱が来て……。
庇ったけど、怒り狂ってる美朱は止められなかった」
「庇った?」
紫貴が聞く。
きっと、信じられなかったんだ。
灰斗さんが、自分の母親の美朱さんじゃなくて、紫貴のお母さんを庇ったって事が。