恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


そう言った灰斗さんの瞳は笑っているのに悲しそうで、紫貴のお母さんへの想いを表してるみたいだった。


自分が自殺に追い込んだ人を……。



灰斗さんは、紫貴のお母さんに惹かれてたんだ。

自分のお父さんを想う、紫貴のお母さんに……。


毎年、雨の時期になると、紫貴とおじさんは、紫貴の両親のお墓参りに出かける。


今までは遠慮してきたけど、来年はついて行かせてもらおう。

紫貴のお母さんと、ちゃんと話がしたい。


そんな風に思って、ハっとする。


灰斗さんが紫貴を初めて訪ねてきたのも、確か雨の日だった。


……そうだ。

紫貴が体調を崩すのは、必ずお墓参りに行った日から。


灰斗さんに会った日は、紫貴のお母さんの命日だ。



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