恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「……去年、初めてあたしと会った時、灰斗さんは用事があってって言ってましたよね?
それって、もしかして紫貴の両親のお墓に……」
「違うよ」
あたしが言い切る前に否定した灰斗さん。
だけど……、否定しているハズの返事が「YES」って意味に聞こえた。
「……違う」
もう一度呟くように言った灰斗さんが、目を伏せる。
今までの10年間、灰斗さんは一体どんな想いを抱えてきたんだろう。
灰斗さんは見つめていた手のひらをぎゅっと握った。
まるで、自分の犯した罪を握り締めるように。
そしてそれを切なそうな瞳で見てから、紫貴に視線を移す。