恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


「もう、おまえ達の邪魔はしない。約束だからね」

「……兄貴が守るとも思えないけど」

「それは否定しない。

……でも、俺はもう後悔したくないから。同じ過ちは犯さない。

……おまえの母親の死は、無駄にしない」


そう言った灰斗さんの横顔が、凛として見えた。

月明かりを背中に受けた灰斗さんは、息を呑むほどキレイに見えた。


紫貴といい灰斗さんといい。

ヴァンパイアの人は、本当に夜の雰囲気がよく似合う。


少しでも目を離したら、そのまま闇に溶けていっちゃいそうなくらいに。



「しばらくは大人しく元帥達に従うよ。行く行くは王家を継いで俺がトップに立たなくちゃだし。

……おまえはハーフでよかったな」


微笑みながらも、すごく強い眼差しで言い切った灰斗さんに、紫貴は何も言わなかった。





< 337 / 343 >

この作品をシェア

pagetop