恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「もう、おまえ達の邪魔はしない。約束だからね」
「……兄貴が守るとも思えないけど」
「それは否定しない。
……でも、俺はもう後悔したくないから。同じ過ちは犯さない。
……おまえの母親の死は、無駄にしない」
そう言った灰斗さんの横顔が、凛として見えた。
月明かりを背中に受けた灰斗さんは、息を呑むほどキレイに見えた。
紫貴といい灰斗さんといい。
ヴァンパイアの人は、本当に夜の雰囲気がよく似合う。
少しでも目を離したら、そのまま闇に溶けていっちゃいそうなくらいに。
「しばらくは大人しく元帥達に従うよ。行く行くは王家を継いで俺がトップに立たなくちゃだし。
……おまえはハーフでよかったな」
微笑みながらも、すごく強い眼差しで言い切った灰斗さんに、紫貴は何も言わなかった。