恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「余計な事は考えるな。兄貴ならどうにでも生きていくから」
灰斗さんが出て行った後も、じっと窓の外を見つめているとそう言われる。
はためくカーテンを見つめてから、紫貴に向き直って頷いた。
「うん」
「それよりも。俺に無断で兄貴と賭けなんかした事……、俺が許すとでも思ってるのか?」
一気に不機嫌な顔をする紫貴。
確かに、逆の立場だったら絶対に許せない事だけに、素直に謝る。
「……ごめんなさい」
本当に反省して言うと、紫貴はあたしの手を握って真面目な顔をした。
紫色の真剣な瞳が、あたしを捕らえる。
「約束して。もう俺の目の届かないところに行かないって。
俺を、忘れたりしないって」
“自分を忘れてでも幸せになって欲しい”
そんな風に思っていた紫貴から出たわがままが、嬉しくて仕方ない。
想いの強さが伝わってくるような瞳に声。
愛しさと涙が一緒に溢れ出てきて、そのまま紫貴に抱きついた。