恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
両親が事故で亡くなって、お父さんの弟だったおじさん夫婦に引き取られたのが10年前。
悲しくて、ただそれだけだったあたしを優しく迎え入れてくれたおじさんとおばさん。
本当の子供じゃないのに、『無償』って言葉がふさわしく思えるような愛情でここまで育ててくれたおじさん達には、感謝してもしきれない。
『くるみちゃんがいてくれたお陰で、私達も救われてる部分がたくさんあるんだから』
なんて、遠慮してしまうあたしをいつも気遣ってくれた。
お陰で、今は本当の家族みたいに甘えることができるようになった。
「気になる事って?」
「たいした事じゃないんだけど……なんか、忘れてる事がある気がして。
写真見たら思い出せるような気がしたんだけど、写真がなくてそれで」
「そうか……。洋子が風呂から出たら一応聞いておくよ」
「うん。お願い。車、おばさんの許可が下りるといいね」
おじさんに笑顔で言ってから部屋に戻る。
だけど……、階段を上がっていた途中、変な違和感を覚えて足を止めた。