恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
注意って、誰に?
誰にしつこいほど注意されたんだっけ……?
「知ってる」
何かを思い出しそうになった時、藍川の声が聞こえて顔を上げる。
じっと見下ろして優しく目を細める藍川と目が合って、目を逸らせなくなった。
「え……?」
『知ってる』って、なんで……。
こんな癖をなんで藍川が知ってるんだろう。
そう思うも、藍川の瞳に言葉が出ない。
じっと……愛しいモノでも見つめるように目を細める藍川に、言葉と動きを封じられたみたいだった。
なんで、こんな優しく見つめられてるの?
なんで、そんな愛しそうにあたしを……。
そのまましばらくの間、藍川はそうしていて、あたしも目を逸らせなくて。
藍川の紫色の瞳に、なぜか懐かしい気持ちが湧き上がってきた時。
藍川が困り顔で微笑んだ。