恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


「何かを忘れてる気がするんだよね。

何か、すごく大切な事……だけど、全然思い出せないし、手掛かりもなくて」


笑われるかと思って、覚悟の上で言ったのに。

藍川は意外にも笑ったりはしなかった。

それどころか、驚いた表情であたしを見つめていた。


まるで、藍川が絶対見つからない場所に隠していた宝物を、あたしが見つけちゃったみたいに、信じられない、って顔をする。


そして、ゆっくりと口を開く。


「……いつからそう感じてた?」

「分からないけど、ここ数日で急に」


藍川の瞳には、珍しく動揺が浮かんでいた。

こんな事を言い出したあたしを、決してからかおうとも笑おうともしない。


そんな藍川に誘われるように、口を開く。


「あの……、気を悪くしないで聞いて欲しいんだけど……」

「なに?」

「あたしが忘れてる何かが、藍川に関係してる気がするんだ」




< 63 / 343 >

この作品をシェア

pagetop