恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「何かを忘れてる気がするんだよね。
何か、すごく大切な事……だけど、全然思い出せないし、手掛かりもなくて」
笑われるかと思って、覚悟の上で言ったのに。
藍川は意外にも笑ったりはしなかった。
それどころか、驚いた表情であたしを見つめていた。
まるで、藍川が絶対見つからない場所に隠していた宝物を、あたしが見つけちゃったみたいに、信じられない、って顔をする。
そして、ゆっくりと口を開く。
「……いつからそう感じてた?」
「分からないけど、ここ数日で急に」
藍川の瞳には、珍しく動揺が浮かんでいた。
こんな事を言い出したあたしを、決してからかおうとも笑おうともしない。
そんな藍川に誘われるように、口を開く。
「あの……、気を悪くしないで聞いて欲しいんだけど……」
「なに?」
「あたしが忘れてる何かが、藍川に関係してる気がするんだ」