恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「いつまでこうしていればいい?」
「え、……あ、ごめん」
藍川の腕を掴んだままだった事に気付いて、慌てて手を離す。
「藍川、人に触られるのとか嫌いなのに……ごめん」
「俺が?」
意外そうに聞くから、頷いてから理由を説明する。
「この間新入生に囲まれた時、『触るな』って怖い顔して言ったって聞いたし。
実際、誰かと特別親しくしたりしてないし、いつも一人だし。そういうの嫌いなんでしょ?」
黒い髪が、オレンジ色の光を受けてきれいに染まる。
紫色の瞳も輝いていて、なんだか幻想的にさえ見えた。
「確かに、馴れ合ったりだとか、他人にベタベタするのは好きじゃない」
一拍置いてから答えた藍川に視線を向けられて、見とれていた事に気付く。
そして、慌てて口を開いた。
「で、でしょ?」
「―――でも、くるみは別だ」
あまりにさらっと、当たり前に言うから、藍川が言った言葉が特別なモノだって気付くまでに時間がかかった。
やっと反応した身体が、一気に熱くなる。