恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
気になって仕方なかった、『忘れてるっぽい何か』の代わりに頭を支配したのは、
またしても他人からしたら『バカバカしい』と思われそうな事。
それは……藍川の、宇宙人疑惑だった。
「ねぇ、祐ちゃん。例えばなんだけど、血が出るような傷を一瞬にして治せる人間っていると思う?」
月曜日の朝、席に着くなりそんな話を切り出した。
祐ちゃんが浮かべるのは、明らかに『何言い出してんの?』的な顔。
ざわざわとうるさい教室には、もうほとんどの生徒がそろっていた。
「あのね、くるみちゃん。人間は自治治癒っていう力を備えてはいるけど、それには時間が必要なの。
ついた傷を一瞬にして消せるなんて人がいるわけないでしょ」
「じゃあ、いるとしたらそれはどんな生物だと思う?」
いるわけないのは分かってる。
だけど、あたしは確かにこの目で見たんだから。