恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


忘れるくらいの事なんだから、たいした事ない。

何度もそう思い込もうとしたのに、ちっとも言う事を聞かない頭。


それどころか、

忘れている事が、絶対に忘れちゃいけない事だったような気持ちにさえさせられる。


思い出せない自分が、何かを失おうとしているみたいに思えて、わけの分からない焦りが浮かぶ。


「……っ」


なんだろう……。

血が騒いでる。

興奮しているのとは違う。緊張とも違う。


気持ちに比例しないで、突然ドキドキ動き出した心臓が、何かを訴えかけているみたいだった。






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