恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
藍川の手が、おでこから頭に触れて、そのまま優しく撫でる。
本当だったら、こんな風に触れられたら緊張して仕方ないハズなのに、不思議とそんな事は思わなかった。
それどころか。
あたしの存在を確かめるように触る手に、無意識に身体が動いて……。
「くるみ……」
「あ……、あれ? ごめん!」
気付けば、藍川の手に触れて頬を寄せていた。
藍川の驚いた表情がそれを気付かせて、慌てて手を離す。
バクバクと心臓がうるさく動いていたけど、今回は恥ずかしさと緊張が原因だってハッキリしていた。
「あっ、チャイム! 藍川、合同体育出ないとでしょ?」
静かになった保健室に鳴り響いたチャイムが助けに思えて言う。
だけど藍川は、あたしの髪あたりを見つめたまま小さく首を振った。