恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「体育は見学だからいい」
「……また体調不良?」
「体調崩しやすいから」
藍川はそれを理由にあまり体育には出席しない。
だけど、欠席するのを体育教官が怒ったり問い詰めたりはしないから、きっとそれなりの事情があるんだって思っていた。
それは他の生徒も一緒で、「身体が弱い」っていう事を誰も疑ったりしない。
むしろ、そんなオプションは、藍川の人気をまた一つ持ち上げていた。
「身体は弱いのに、力はあるって……なんか変なの」
「別に不思議じゃないだろ。苦手なんだ、運動が」
微笑む表情に、イタズラが見える。
「嘘ばっかり。苦手だとか言っておいて、走り出したら一位を獲るんだよ。他の男子から見たらイヤミなヤツだよね、藍川って」
あたしの憎まれ口に、藍川はクスっと笑うだけだった。
しばらくそうしてから、優しく微笑んで聞く。