恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


「『何か』は、思い出せた?」


昨日していた話題を持ち出されて、嬉しくなる。

話した事を覚えているのは、別に普通なのに。


何かを忘れているって事を藍川には話してもいいって思ったり、こんな風にちょっとした事で心が温かくなったり。

特別仲がいいわけでもないのに、一緒にいると変に落ち着いたり、甘えたくなったり……。

本当に調子が狂わされる。


「思い出せない。……すごくすごく大切な事だった気がするのに。

さっき気を失ったのも、それを考えてたら、急に血が昇るような感覚になって……それで」

「……無理して思い出す必要もないだろ」

「でも、」

「そんな風に倒れたりするほど、自分を追い詰めたりする必要なんかない」


切なく細められた瞳で見つめられる。


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