恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
『思い出す必要ない』
確かに言葉ではそう言われたのに……。
藍川の瞳を見て、それとは反対の気持ちが湧き上がる。
『忘れるな』
藍川に、そう言われているような気持ちになる―――……。
「ううん。ダメ。……忘れちゃいけないような事だったのは、なんとなく分かるから。
なんで忘れてるのか分からないけど……」
藍川は「そう」と呟くだけだった。
「藍川は、何か知ってるの……?」
なんとなく聞いちゃっただけだったけど、言ってから驚く。
だって、忘れている何かに藍川が関係してるって事は、あたしが勝手に思い込んでいるだけであって、そんな証拠一つもないのに。
「ごめんっ……知ってるわけないよね、何言ってるんだろ……」
慌てて否定すると、藍川がわずかに微笑む。