恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
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『以上を持ちまして、生徒会からの発表を終わりにします。
尚、生徒からの意見を参考にした結果ではありますが、何か意見のある方は挙手で……』
壇上で表情一つ崩さずに話しているのは、藍川紫貴。
あたしと同じ17歳のくせに、呆れるほど冷静で大人びた雰囲気の持ち主。
それにプラスして、容姿端麗。
整っている外見が出すのは冷たいオーラ。
そのせいで、隠れファンはいるものの、藍川に直接まとわりついたりする子はほとんどいない。
何も知らない新入生を抜かして。
まぁでも、こないだの『触るな』事件はちょっとした噂になったから、新入生の間でも『藍川に近づくのは注意した方がいい』ってのは既に暗黙の了解になってるかもしれないけど。
ファンの中では、『王子』とか呼ばれちゃってるらしい藍川。
……ちょっと似合ってるのが笑えるようで、でもどこか気に入らない。
チャコールグレイのブレザーとワインレットのネクタイが校内の誰よりも似合っていて、
艶のある声なんか、学校中どころかテレビの中の世界を含めても、アレ以上のものなんか聞いた事がない。
その声が、昨日からあたしに疑問を残してる。