恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「……なんでここが分かった?」
インターホンを押して、しばらくしてからドアを開けた藍川。
その反応は、訪ねてきたのがあたしだって、ドアを開ける前から分かっていたみたいだった。
眉を潜めた藍川が着ているのは、黒いTシャツに濃紺色のスウェット。
「先生に聞いて。こないだ一人暮らしだって言ってたし、ちょっと気になって。
……大丈夫?」
昨日のヴァンパイア発言。
そのまま早退した藍川が、今日学校を休んだりするから、気になって仕方なくてした自宅訪問。
迷惑がられるかなって心配しながら聞いたあたしに、藍川は困り顔で笑った。
「本当に体調が悪かったわけじゃない。ちょっと考えたい事があってそれで」
「……そういうの、ズル休みって言うんじゃないの?」
「生徒会長なんてしてると信頼が厚いみたいで、教師も少しも疑わないから大丈夫だろ」
「その生徒会の仕事をしてるのは、ほとんどあたしなんだけどね。
でもよかった。大丈夫そうで」
いつも通りの藍川にほっとしながら言うと、藍川は微笑んで聞く。