恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「―――くるみ?」
「え……、あ、」
藍川に声をかけられて、元の世界に引き戻される。
ハっとして声のした方を見ると、心配そうに表情を崩した藍川の姿があった。
「あ、ごめん……」
……今のは、なに?
緊張とは違うドキドキが身体に鳴り響く。
今のは写真?
だけど、藍川もあたしも、幼かった……。
間違いなく、高校生にもなっていない頃だった。
あたしが初めて藍川と逢ったのは高校だし、それ以前に面識なんかないのに……。
自分の事なのに、分からない。
今一瞬見えた光景が嘘なの?
それともあたしの記憶が何か間違ってるの……?
それとも、どっちも?
全部が嘘に思えてきて、堪らなく不安になる。