恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
そこまで言うと、呆れたのか、少し笑われる。
だけどそれは、誤魔化すためにも思えたから、藍川の肩に触れて強制的にあたしの方を向かせた。
「誤魔化さないで。はぐらかさないって、約束したでしょ」
「……質問は一つだって言っただろ?」
「あたしは頷いてないもん」
なんとなく……、藍川がなんて答えるのか予想ができた。
あたしが言ったのは屁理屈で、藍川は答える必要なんかない。
だけど、きっと藍川は―――……。
腕を強く掴んだまま見上げていると、藍川はあたしをじっと見つめながら言う。
「試しに言ってみろ。内容による」
「……やっぱり」
「なにが?」
「あたし……藍川と会った事がある気がするの。高校の入学式よりもっと前に。
今も、藍川が『言ってみろ』って、そう言ってくれるのが分かってた気がする。
いつもどこかで、あたしに甘いって……あたし、知ってる」