風紀委員長ミーシャの事件簿
まるで大人と子供の組み手を見ているようだった。

常に全力で攻撃に転じる生徒に対し、ラインハルトさんは最小の動きで最大の効果をあげている。

しかも生徒が無駄な怪我を負わないよう、手加減も忘れない。

相当な実力差がなければ、こんな真似はできないだろう。

そしてこの行為が、余計に生徒のプライドを傷つける。

「こんの…野郎!」

怒りに我を忘れ、最早技どころではない。

野蛮な獣のように、生徒は両手でラインハルトさんに掴みかかる!

体格差は歴然としている。

掴んで力任せに押し倒そうとでもしたのだろう。

…向かってくる生徒に対し、ラインハルトさんは軽く溜息をつく。

「やはり決定的なダメージを与えなければならないか」

腰を低く落とし、彼は強い眼差しを生徒に向けた。

「少し痛いぞ。許せ」

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