風紀委員長ミーシャの事件簿
聞こえる…確かに聞こえる。

不明瞭ながらも耳に届く、人の声。

同時に校舎を通して、不穏な魔力がひしひしと伝わってくる。

ただの儀式魔法や、授業で習う下位魔法の類では、こんな怨念じみた魔力は搾り出せない。

遠隔地から憎悪を魔力に載せ、触れずして相手に災禍をもたらす。

いわゆる『呪い』の儀式でのみ醸し出される、殺意そのもののような魔力だった。

「どうやら情報はビンゴだったようだね」

ラインハルトさんが宿直室の扉を開けた。

その背中に、悪霊に対する恐怖や脅えは微塵も感じられない。

事件解決の為に勇敢に立ち向かう、天空宮市の平和と安寧を守る騎士としての責任が滲み出ていた。

< 57 / 91 >

この作品をシェア

pagetop