誘惑プリンセス【BL】
不意にBGMが消え、辺りが暗くなる。
同時に沸き起こる歓声は、ヒメや陣くん達を呼ぶ女の子の黄色い声の他に、男の太い声や、おかえり、とかの歓迎が混じっていた。
そんな声に後押しされるように俺も、心の中だけで『おかえり』と呼び掛けた。
ヒメがずっとステージで歌いたがっていたのを知っているだけに、妙に感動めいた気持ちが込み上げてくる。
メンバーが姿を現すと、歓声は一際大きくなった。
ここにいるみんなが、ヒメ達の帰りを待っていたんだ、っていうのが壁際の俺にまでひしひしと伝わってくる。
最後にやって来たヒメが中央のスタンドマイクの前に立った瞬間、律くんのギターが響いて、陣くんのベースが重なる。
朔杜さんのドラムも混ざって曲の激しさが増した頃、俯いていたヒメがマイクを握った──