誘惑プリンセス【BL】
「──俺、カッコ良かっただろ」
空になった缶が幾つもテーブルに並び始めた頃。
不意にヒメが聞いてきた。
「そう言うことは自分から言うもんじゃないだろ」
「だって、恭介何にも言わねぇんだもん」
「ヒメもだけど、メンバーみんな凄いと思ったよ」
「他のヤツらはどうでもいい」
「そんな言い方無いだろ」
まるで、自分一人の力だけでライブを成功させた、みたいな偉そうな言い方に、俺は思わず強く返してしまっていた。
「……うるせぇよ。恭介は、俺だけ見てりゃいいんだよ」
吐き出すように俯いたかと思えば、直ぐに顔をあげて「冷蔵庫にビールあったよな」と言ってきた。
ヒメがコンビニで買ってきた分は終わり──と言っても殆どヒメが飲んだんだけど。