誘惑プリンセス【BL】
 
「恭介は、俺のことが好きなんだろ? だから、二度とそんなこと言えないように、俺のこと全部教えてやるよ」

「な……んだよ、それ……」


 静かに身体を起こしたヒメは、シャツを脱ぎ捨てて上半身を惜しげもなく曝してくる。


 くっきりと鎖骨が浮かぶ華奢な身体に、白い肌。


 その鎖骨の下に、痣にも似た赤い痕を見付けて、俺は思わず顔を背けた。


「……ああ、コレ?」


 俺の仕草にヒメも気付いたみたいだ。

 慌てるでもなく、隠すでもなく。

 逆に、俺に見せ付けるように身体を近付けてきた。


「こんなの、珍しくもなんとも無いじゃん。すぐに付くし、すぐに消える……。何の意味もねぇよ」


 そう言いながらも背を丸めて、俺の脇腹に唇を押し付ける。

 吸い付かれるその感触が何だか擽ったい。


「ほら……って、見えないか」


 小さく笑いながら、ヒメはまた俺に顔を近付けてくる。

 何を考えているのか、全く分からない、そんな表情で。


「こんなことして、楽しいのかよ」

「楽しくない?」

「そんなわけあるか! いい加減止めてくれ!!」

「……そうだよな」


 自嘲気味に、小さく。

 ヒメが呟く。


「これじゃ、アイツと一緒だ。俺、何やってんだろ……」


 俺の顔の横に両手を突いて俯いたヒメは、そのまま暫く動かなかった。
 
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