誘惑プリンセス【BL】
 
「……っ、なぁ、ヒメ──」


 そのことが、何に繋がっているんだ?

 実の兄貴に犯されたから、男が好き?

 だから無理矢理こんなことを?

 そんな簡単な話じゃないだろ!?

 何で今、そんなことを俺に……?


「──兄貴との関係に、精神的に参ってた俺を助けてくれたのが、朧だった」


 朧、さん……。

 その名前を聞く度に、胸が締め付けられるような気がする。

 ヒメにとってとんでもなく特別な存在であることは分かってた。

 けど、そんな事情があったなんて、これっぽっちも思わなかった。


「あの時の俺には、朧が必要だったんだ。朧と離れるのが怖くて……アイツを繋ぎ止める為の手段がセックスだったんだぜ。笑えるだろ?」


 自嘲混じりの声に、返してやれるうまい言葉なんて見付からなくて。


 なんて言えばヒメに届くのか。

 なんて言えばヒメを救えるのか。


 救える、だなんて出過ぎたことかもしれない。

 だけど、こんなにも辛そうなヒメ、見ていられない。


「散々兄貴にヤられて、気付けば男とヤる方が気持ち良くなってた……。でも兄貴はいつだって俺を見てない。俺に、お袋を重ねて……っ、お袋の名前、呼んで……」


 言葉を詰まらせて。

 込み上げる嗚咽を堪えて。

 ヒメはひとつひとつ言葉を重ねていく。

 俺なんかには計り知れない思いがそこには詰まっていて、聞いているこっちまで胸が締め付けられる。
 
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