誘惑プリンセス【BL】
 
「──どいつもこいつも、女ひとりに振り回されてバカみてぇ。……そんなバカに振り回されてる俺は、もっとバカだ……っ!」


 弾けるみたいに声を荒げたヒメは、華奢な拳で俺の胸を叩いた。

 痛むほどの衝撃はなくても、そこから痛いくらいの感情が流れてくる。


「恭介も、そう思うだろ。俺のこと、バカなヤツだって思うだろ!?」

「思わないよ」


 俺は、即答していた。


「どうしてだよ! 俺は、アイツみたいに無理矢理……っ」

「確かに無理矢理かもしれないけど、本当に嫌だったらヒメのこと蹴り飛ばしてる」


 例え手錠で繋がれようとも、襲われかけようとも。

 言葉では、何とでも言える。


 だけど俺には、ヒメを拒絶するなんて出来ない。


 ヒメのことを、信じているから。


「じゃあ、蹴り飛ばしてでも止めろよ! 俺は、俺のことを好きだって言ったお前を裏切ったんだぞ!!」

「別に、裏切られたなんて思ってない」

「嘘だ! 俺は、兄貴にヤられた時も、朧にガキが出来た時も、裏切られたとしか思えなかった!!」


 裏切られたと思ってしまうほど、ヒメは2人のことを信じていたんだ。


「もう、嫌なんだ……誰かを特別に想うのは……」


 それでも、俺は……。
 
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