誘惑プリンセス【BL】
├焦り
あんなことがあった後だと言うのに、俺はいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
思っている以上に俺は図太い神経をしているんだろうか。
気が付けば、窓の外はすっかり明るくなっていた。
ふと目に入った手首には赤い痣がついていて、明らかに不自然なそれらが生々しく数時間前の記憶を呼び覚ます。
ヒメからのカミングアウトに、告白。
何か理由があって今のヒメが在るんであろうことは分かってた。
けど、あのヒメが……。
「好き、って……言ったよな」
一人暮らしは独り言が増えて嫌だ。
思わず口にしてしまった言葉に、顔が熱くなる。
だが待て、俺。
喜んでる場合じゃない。
幾ら好きと言われたからって、あの時のヒメは……辛そうに口にしてた。
天の邪鬼なアイツの事だ。
本気にした?
バカじゃねぇの?
とかって前言撤回……するかもしれない。
別にそうされるのが嫌だという訳じゃない。
ヒメのことは、結構分かってきているつもりだ。
取り敢えずもう一度、ちゃんと向き合って話をしよう。
そう強く決めた俺は、無駄にドキドキしながら隣の部屋の前に立った。