誘惑プリンセス【BL】
 
 折角の休みだというのに俺の心が休まる筈もなく。

 何かをする気にもなれず時間ばかりが過ぎて行き、気付けば23時を回っていた。


 ヒメを探しに行こうにも、行き先の心当たりなんて全く無い。

 強いて言えば陣くんだけど、まさか自分から『ヒメが居なくなった』なんて連絡するのもな……。


 結局、待っていてもヒメからの連絡なんてあるはずも無くて、ヒメが居ない、という現実だけが俺の目の前に広がっている。

 玄関のブーツはそのままだけど、あんなのは気休めでしかない。

 ヒメが戻ってこなければ、意味がない。

 ひっそりと静まり返った部屋が、何だか淋しく感じられた。

 何とはなしにベッドに腰かけた時、ポケットに入れたままの携帯が慌ただしく鳴り始めた。

 着信相手は──陣くん。
 
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