誘惑プリンセス【BL】

　
「……っ、はい」


　思わず、声が震えた。

　このタイミングで陣くんからの電話ということは、確実にヒメのこと──であって欲しい。


『──急に電話してすみません。あの、ヒメノのことでちょっと……』


　少し声を潜めている陣くんの様子に、俺の心臓が早鐘の様に動き出す。


「ヒメ、そっちにいるんだろ？」


　次の言葉を待つのも焦れったくなってしまった俺は、陣くんの声に被せて聞いてしまっていた。


『……え？』

「……え、て……？」


　成立しない会話が理解できない。

　ヒメは、陣くんの所にいるんじゃないのか？

　その事で電話してきたんじゃないのか？