誘惑プリンセス【BL】
『もしかして、ヒメノと何かあったんですか』
「あったも何も……あいつ、出ていった」
初めて口に出して、それが間違いなく現実なのだと思い知らされたような気がした。
ヒメは、ここから出ていってしまった。
1日中頭から離れてくれなかったその事を、漸く受け入れられそうだ。
『そんな……』
「荷物が無くなってるんだ。陣くんの所に行ったんだと思ったけど……そうじゃないみたいだね」
自分で思っている以上にダメージを食らっているようだ。
電話越しでもそんな俺の心情が伝わってしまったのか、陣くんはしばらく黙った後で静かに喋りだした。