誘惑プリンセス【BL】
手にした携帯を見つめたまま考え込んでしまったようで、ピンポン、と響いたドアチャイムの音で我に返った。
何気なく目にした時計は、電話が切れてから20分程経過したことを示している。
「遅くにすみません」
そう言っていつもと変わらない笑顔を見せる陣くんは、相変わらず男前な短髪だけど、金髪から普通の茶髪に変わっていた。
変わったのはそこだけなのに、めちゃくちゃ好青年に見えるのはどうしてだろう。
いや、普段だって十分好青年だけど。
「恭介さん?」
思わず陣くんを凝視してしまっていた。
「髪の色だけで大分雰囲気変わるね」
まるで取り繕うかの様に慌てて付け足した俺に、陣くんは「紹介して貰ったバイト先が厳しいんですよね」と、少し苦い表情で応えてくれた。
「バンドやってるから、少しでも目立ちたくて金髪にしてたんですけど、コレじゃ普通過ぎますよね」
「俺は今の方が陣くんに似合ってると思うけどな」
陣くんは、ありがとうございます、と恥ずかしそうに笑っている。
そんな彼を見ていると、何故だか日常に戻った様な、ほっと落ち着く様な気がした。