誘惑プリンセス【BL】
「好きか嫌いかなら、やっぱり……嫌いです。すみません」
「謝ることないよ」
きっと陣くんには、彼にしか分からない、譲れない気持ちがあるんだろう。
誰かを嫌いだとハッキリ言いながらも、付き合いを止めようとしない人もいるんだな。
そんな風に考えながらぬるくなったコーヒーを口に含む。
いつの間にか俺の心は落ち着きを取り戻していた。
陣くんと話せて、良かった。
「あの、恭介さん」
視線をカップから陣くんに戻すと、ヤケに真面目な顔していて、何だか俺まで緊張してくる。
何を言われるのかとドキドキしていたら──
「──恭介さん、俺と付き合いませんか」
思わぬ言葉に俺が固まっていると、陣くんは苦笑いで「すみません。びっくりさせちゃいましたよね」と謝って来た。
「別に、俺は男が好きって訳じゃないんです。他の人みたいにヒメノは可愛いと思いますけど、絶対に付き合いたくなんて無いし……こんな風に思ったの、恭介さんが初めてなんですよ」
陣くんの言葉が、聞こえているんだけど、全く頭に入って来ない。
「……や、あの、陣くん、それは……」
辛うじて口を開いたけど、言葉になってくれない。
いつだって真面目で、常識人な陣くんが、俺を好きだなんて……。
ちょ、ちょっと待て!
なんだ、コレ。
なんで俺、告白されてるんだ?