誘惑プリンセス【BL】
「陣、てめぇ、どういうつもりなんだ。ヒメノはソイツの所為で……!」
「朔杜さんこそ、どういうつもりですか。ヒメノを甘やかして、自己満足の為に側においてるだけですよね? ヒメノだって分かってるだろ。今はそれで良いかもしれないけど、何の解決にもなってない」
いつになく、陣くんが強気に言葉をぶつける。
と言うより、少し苛立っている様にも感じられた。
「ヒメノ。逃げるのは、もう終わりにしよう。お兄さんと朧さんの事はもう後戻り出来ないけど、恭介さんとはこれからだろ」
その言葉が、やけに胸に響くような気がした。
他の誰かの言葉なら、恥ずかしくて聞けたもんじゃないだろう。
陣くんからの言葉だから、彼に告白された後だから……だろうか。
「……んだよ。何もかも分かったみてぇに言うんじゃねぇよ!」
「そうやって否定ばかりして逃げてたら、手に入るモノも失うぞ!」
「ナニ言ってんだ……。バカじゃねぇの? 俺は、何も手に入れてない。何ひとつ、俺のモンにならなかった。……もう、嫌だ」
掻き消されそうなくらい、小さな声だった。
「何もかも、諦めるのか!?」
陣くんが声を荒げても、ヒメは小さく蹲ったまま動かない。