誘惑プリンセス【BL】
 
「ヒメが何て言おうと、俺はヒメが好きだよ」

「……だから、何だよ」

「一緒に、帰ろう」


 ぐしゃぐしゃになった髪を整えてやり、両手を肩に添える。


「それから、一緒にメシ食って、一緒に寝る。今までは何だか恥ずかしかったけど、やっぱりヒメが居ないと落ち着かないんだ」


 恥ずかしい事を言ってるという自覚はある。

 けど、ここで言葉を渋っていたら、ヒメにも、陣くんにも朔杜さんにも、俺の本心は届かないから。


「……俺は、別にお前なんか、必要ない」


 もごもごと、俺を否定する小さな言葉が返って来る。

 だけど、時々鼻を啜る音が聞こえる。

 ヒメが本気で嫌なら、怒る筈だ。

 泣いていたって叫んで、ここから、俺の前から逃げて行く筈だ。


「ああ、そう──」


 だから俺は、ワザと突き放す様な態度を取る。

 溜息を吐いて、少し、間をあける。


「そんな風にヒメが思っているなら……、って──引き下がれる訳が無いだろ!」

「……ぅわっ!」


 ガッシリとヒメの肩を掴んで、無理矢理立たせる。

 びっくりしてよろけたヒメを抱き留めて、そのまま玄関から外へと引き摺り出した。
 
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