誘惑プリンセス【BL】
 
 彼と入れ替わるようにして、陣くんがヒメのトランクを抱えて出てくる。

 やけに機嫌が良さそうなのは、どうしてだろう。


「朔杜さん、大人しくヒメノを渡したみたいですね」

「泣かせるな、って釘を刺されたよ」

「気にする事無いですよ。朔杜さんだって完璧にヒメノを支えていた訳じゃ無いですし」

「何だか棘のある言い方をするね」


 思わず言ってしまって、ごめんと謝る。

 陣くんは、いいですよ、と笑っているけど、どこかぎこちなさを感じさせられた。


「朔杜さんがヒメノを側に置きたがるのは、少しでも朧さんに勝つ為なんですよ」


 それだけ言うとゆっくりと歩き出した陣くんの後に着いて、俺達はエレベーターに乗る。
 
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