誘惑プリンセス【BL】
 
「アイツじゃなけりゃ、誰でも良いんだよ。誰かが居てくれれば、それで良かった。陣も朔杜もその事知ってるから、俺に付き合ってくれた。けど……」


 段々と小さくなる声を聞き逃さない様に。

 布団に張り付くようにして、ヒメの手をしっかり握りしめる。


「……あ、兄貴に会ってから、急に調子悪くなって……薬も、無くて……」


 声をつまらせる様に話すヒメの背中を、布団越しにそっと撫でる。

 小さな子どもをあやすみたいに撫で続けると、俺の手を握るヒメの手が動いて、布団の中に肘まで引き込まれた。


「ヒメ……。俺から聞いた事だけど、無理して話さなくていいから」

「恭介は、大丈夫なんだ」

「え?」

「恭介と居ると、ココに居ると、なんだか、安心っていうか、落ち着くんだ……」


 それって、つまり、俺はヒメに必要とされてる、って事だよな。

 迎えに行った時、必要ない、なんて言ったのは強がってただけなんだろ?
 
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