誘惑プリンセス【BL】
「ヒメ……」
「──俺、ここに居たい。恭介と一緒に、居たい……」
その言葉を聞いた瞬間、俺は勢いに任せてヒメを隠す布団を思いっきり剥がしていた。
ヒメの手を引いて無理矢理起こすと、涙でぐしゃぐしゃの顔を正面から見つめる。
頬に張り付いた髪をそっと退かしてやった後、殆ど衝動的にキスをしていた。
涙が零れ落ちる目元に。
感情を抑えるように引き結ばれた唇に。
「ヒメの過去や今の状況がどんなだったって、それを非難したり責めたりしないよ。俺は、ヒメが好きなんだから」
華奢な身体を抱き寄せて、その温もりをしっかりと感じる。
俺がちゃんと支えてやらないと、なんて庇護欲染みた気持ちが膨らんできてしまう。
「ヒメは? ヒメが俺を好きだと思ってくれてるなら、大丈夫だよ。何も心配しなくていい。だから、もう泣くなよ」
俺と居たい、って言ってくれているのに、それ以上の言葉を求めるのはズルいだろうか。
形の良い後頭部に手を添えて、ぐしゃぐしゃと髪を掻き混ぜる。
すると、いつもの香水とは違う知らない匂いがした。
その事が嫌だと、直感的に感じてしまった事に自分自身驚きながらもヒメの髪に触れるのを止められない。
スルスルと指通りの良い金髪は、よく見ると根元数ミリ程黒い地毛が出てきている。