誘惑プリンセス【BL】
 
 暫く抱き合っていた俺達だけど、時間が経てば経つほど、どうやって離れたらいいものか分からなくなってくる。

 そういえば、さっきから全然ヒメが動かないけど、まさか寝てたりしないよな?

 ヒメの顔を覗こうと少し動いたら、突然ヒメが顔を上げた。

 危うく頭突きを喰らいそうになったのを、ギリギリで避ける。

 思わずヒメの身体を押し返してしまった為に、離れていってしまった体温が何だか名残惜しいけど、離れる切っ掛けになったのは有難い。

 それでも内心ドキドキしていると、腫れぼったい目をしたヒメが「なぁ」といつもの感じで話し掛けてきた。


「俺達、恋人同士なんだよな」

「えっ、あぁ、うん……そういう、事になるな」


 まさかヒメからそんな事を言われるとは思ってもみなかった。

 そういった言葉に縛られるのは嫌だって言っていたから。

 恋人……。

 お互い好きなんだから、ちゃんと気持ちを確認しあったんだから、そういう関係になれたと思って良いんだよな。

 いざそんな言葉を突き付けられると戸惑いを感じてしまうけど、なんだかくすぐったいような、あたたかいような気持ちになって来る。

 恋人、か……。

 心の中で何度かその言葉を繰り返してみる。

 そうすると、段々と現実感が伴って来たのか顔が熱くなってきた。

 やばい。

 心臓がドキドキして、ヒメの顔が見られない。
 
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