誘惑プリンセス【BL】
「──それならさ、もう変な遠慮とかいらないよな?」
「え?」
ヒメの言葉の意味が分からず、俺は上擦ったような変な声しか出なかった。
「今度こそ、ベッド買おうぜ」
「はぁ!?」
いつだったか、そんな遣り取りをした事があった。
あの時は、何言ってるんだ、って気持ちだったけど……。
「なぁ、良いだろ?」
「いや、急に言われても……」
今となっては、それはヒメの切実なる願いなんだろうとは思うが。
思うんだけど、複雑な感情が入り混じって素直に返事が出来ない。
正直なところ、ヒメと同じベッドで眠れるのは嬉しい。
今までは、揶揄かうな、っていう気持ちの方が強かったから喜んでなんていられなかった。
好きなヤツの無防備な寝顔を見ながら、体温を感じながら、何もしないで寝られる男がどこに居るっていうんだ。
それが一晩ならまだしもほぼ毎日ともなれば生殺しもいいところだ。
もちろん、そんな俺の心の内をヒメに知られればしつこく迫って来るのが目に見えてたから必死に隠してたけど。