誘惑プリンセス【BL】
 
「……その、……っ、俺は、男とするの初めてだからっ、ヒメに無理させてないかなって……気になって……」

「俺は大丈夫。俺の事より、恭介は?」

「俺!? どう考えてもヒメの方が……っ」

「カラダの事じゃねぇよ。ココ、だよ」


 言って、ヒメは俺の胸をトントンと指先で叩く。

 そして直ぐ、擦り寄るみたいにくっついて隠れられてしまった。


「俺は、男とするの慣れてるから……平気」


 自嘲気味に放たれた言葉に、何だか胸の奥がぎゅっとなる。

 ヒメの身体に腕を回して、その温かな体温を包み込む。


「恭介は、俺が初めてだろ。昨日は俺が無理矢理誘ったようなもんだし、そろそろ頭冷えて後悔してないかな、って……」


 段々と声が小さくなっていくヒメの髪を撫でながら、俺は「そんな事ないよ」と言い聞かせるみたいに言葉を注ぎ込む。


「確かに思い出すと恥ずかしくて堪らないけど、ヒメとひとつになれて嬉しかったし、幸せだと思った。そりゃあ多少びっくりはしたけど、嫌だなんて思ったらあんな事出来ないって」

「……そっか」


 たったそれだけ。

 小さく呟いて、ヒメがさらにギュッと抱きついて来る。
 
< 168 / 171 >

この作品をシェア

pagetop